コレクション: Oshima Trench Coat
100 年経っても変わらない価値と
100 年以上愛される外套との出会い
Old Masterpiece
フランスの「ゴブラン織」、イランの「ペルシャ絨毯」と並び世界三大織物に数えられる、鹿児島県奄美大島が生み出した日本が誇る絹織物「大島紬」。
車輪梅(テーチ木)の樹皮を煮出した液で正絹生糸を染めた後、泥田に漬ける2段階染色によって行われる「泥染め」。
1反織り上げるのに数年もの時間を要する事もあるこの美しい織物は、なんと30以上もの工程を経て生み出されます。
動くたび「シュッ」っと鳴る小気味よい絹擦れの音。
図柄や紋様にはそれぞれ意味があり、歴史と風土と先人たちの営みが生み出した奇跡を感じずにはいられません。
New Works
トレンチコート。
コートの中でも格別の存在感を誇るその製品は、1900年代初頭に軍服としてイギリスで誕生。
「トレンチ(塹壕)」の称は、このコートが第一次大戦で多く生じた泥濘地(でいねいち)での塹壕戦で耐候性を発揮したことによる。とあります。
文献を辿ると、数々のモデルチェンジを経て1915年(大正4年)に「トレンチコート」という名称が備わった製品がつくられたようです。
製品の至る所に散見されるフラップやベルト、エポーレットは、戦闘時様々な状況下で機能するディティールでした。
「泥濘地戦用に開発されたトレンチコート」と、「泥染めした正絹糸で織る大島紬」に関連性は全くありませんが、「泥」という共通するキーワードを頼りにそのふたつを掛け合わせてみたところ、偶然にも極めて趣のある製品となりました。
大島紬の特徴である「100年経っても変わらない強さとしなやかさ」が、採用した大きな理由にもなりました。
AITTAのトレンチコートは、トレンチコートが誕生した際のデザインと、その後ファッションアイテムとして取り入れられた際のデザインの双方をベースとした、言わばハイブリッド型。
そのレシピには、私たちの特別な想いを込めています。
トレンチコートは着丈が長い上、フラップやベルトなどのパーツが多数付属するため、コート1着を仕立てるのに着物1着では足りません。
大島紬の着物を複数用いるため、「クレイジーパターン」の手法を取り入れる事にしました。
生地を余す事なく使い切る方針上、1着目で余った生地は2着目以降へ。
2着目で余った生地は3着目以降へ
繰り越してつくっていきます。
「もったいない」の精神や「遊び心」が宿る、サステナビリティを重んじる現代において重要な生産スタイルと考えています。
裏地にはデッドストックの胴裏を使用。
未使用の状態でも、経年により黄変するのが正絹胴裏。それらを桑の葉で染め上げ、目を引く萌葱色にしています。
「裏勝り」という言葉があります。
奢侈禁止令がきっかけとなり表よりも裏に派手さや豪華さを置く、特に男物の和服に見られる江戸時代の風習。
表からは見えないところに目を引く色や絵を忍ばせる、日本独自で発展を遂げた美意識。
そんな「裏勝り」を踏襲した仕立てとしました。
ボタンはその1着毎に様々なものを設えます。
共地によるくるみボタン、1点1点異なるフランスのアンティークボタンなど、その都度個性のあるボタンを選んでいます。
背中のストームフラップには、オプションで「背守り」と名付けたスペシャルボタンを
お選び頂く事もできます。
その際は、「ガラスのフレンチアンティークボタンをベースに、漆芸家による卵殻の漆塗りを施すボタン」や、「1915年製(大正4年製)旭日50銭銀貨をコンチョ状に加工したボタン」など、一際手間をかけた1点をご提案します。
秀逸な和服地を着用することのできる1着に仕立て直す事を心がけています。
大島紬のトレンチコートは、 AITTAがつくるべき製品、
そしてAITTAにしかつくることのできない製品です。