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留袖。
それは着物の中で、既婚女性が着用する最も格式高い礼装です。
特に黒留袖は、結婚式や披露宴において親族の既婚女性・仲人夫人が着用する事の多い着物。
黒留袖を男性の洋装で例えると、「モーニング」や「タキシード」といったものに当てはまるでしょう。
そのような祝いの席で着用される着物のため、縁起の良いとされるモチーフが「絵羽模様」として絵
付けされるのが特徴です。
絵羽模様とは、着物の端からおおよそ反対側の端に至るまで、流れるように絵が入ることを言いま
す。
その中でも黒留袖は通常の着物とは異なり、漆黒に染められた黒絹地に裾のみ金糸や金箔といっ
た華やかな装飾が施され、大胆で煌びやかな絵付けを施します。
着物は着用する方に応じてサイズ調節した上で仕立て上げられますが、留袖に付けられた絵羽はあ
る程度サイズ調節されても、その絵が連なるよう縫い代にあたる箇所にも繊細に絵が付けられてい
ます。
つまり、絵羽模様の絵付師は、予めそういった想定を基に絵の構成を考え、絵付けしてゆくのです。
「縫い合わせの位置が可変するものに対し絵を付けていく事」、これは決して容易とは言えません。
祝いの席で着用する衣服。和装・洋装共にひとりのひとが着用する機会はどれほどでしょうか。
着物の着用機会が激減する昨今。特に着用頻度の低い黒留袖は、そこにこめられた意味と、本来
の価値を忘れられつつあるのが現状です。
日本が生み出した伝統と工芸、そしてその技術。
特別な着物であるが故、その中でも高いレベルでつくられた黒留袖。
AITTAは、そんな、秀逸にもかかわらずとても残念な状況に置かれている黒留袖を用いたアップサイ
クル製品を独自の解釈でつくりたいと思いました。
大胆に描かれた絵羽模様の素晴らしさ、その絵は着物として着用すると重ね合わさる一部分が隠れ
てしまう。
その素晴らしい絵を、ひとつの製品で途切れなく繋げて魅せる事はできないだろうか。
そんな想いを基に着目したのがスーベニアジャケット、通称「スカジャン」。
第二次世界大戦後、神奈川県横須賀市に駐留していた米兵が帰国の際にお土産(スーベニア)とし
て調達した製品。
日本の特徴とも言えるオリエンタルなモチーフ、「鷲・鷹・虎・龍」などが横振り刺繍にて施されるのが
特徴。
それに加えて米兵の所属部隊名や、紋章などを随所に刺繍し母国へ持ち帰る風潮がありました。
数少ない日本で生まれた洋服であるスーベニアジャケットをベースに、黒留袖の絵羽を綺麗に繋げ
て見せる。
ゆったりとした身幅をとって、刺繍の代わりに黒留袖の絵を身頃いっぱいに配置する。
芸術品とも言える日本の着物に、更なる価値を見出せる表現になることを願い動きました。
本来、化繊やウール、綿それらを混合したブレンド糸で編まれたものが多い「パーツ」にもこだわりを
持たせました。
衿ぐり・裾・袖口のリブ:シルク糸による別注仕立て
首の脇から袖口にかけて縫い込まれるコードパイピング:正絹反物を用いた加工品
AITTAのスーベニアジャケットは、それらを全てシルクで統一しています。
シルクの編み糸は高価ですが、リブのサンプルをつくってみて味わう事のできた質感や肌触りはや
はり一級品。
前身頃ポケットの両脇に飾られた三角のパーツ。
共地を内側に閉じ込め、端を絹刺繍糸でかがるオリジナルパーツは、
ラグジュアリー且つ、取付けの工程に安定感を出す事ができる特別な仕様となりました。
もちろん、重要なパーツであるファスナーにも
表情の強さと高級感を兼ね備えたriri(スイス)やLAMPO(イタリア)を採用し、“ふさわしさ”を追求しま
した。
私たちは妥協する事なく独自の目線で秀逸な着物を探し出し、手作業に多くの時間を掛けるため、
一度にたくさんの製品をつくることは出来ません。
絵柄、コンディション、ストーリー・・・愛でながら1着1着仕立ててゆく。
AITTAの特別な留袖スーベニアジャケットです。